GPUサーバーとは?用途と特徴や導入のポイントを解説

GPUサーバーとは?用途と特徴や導入のポイントを解説

近年、AI(人工知能)やディープラーニング、3Dレンダリング、科学シミュレーションなど、高度な計算処理を必要とする分野でGPUサーバーの需要が急速に高まっています。GPUは元々、画像処理やグラフィック描画を得意とするプロセッサですが、その並列処理能力の高さから、機械学習モデルの学習やビッグデータ解析など幅広い用途で活用されるようになりました。

CPUサーバーに比べ、膨大な計算を同時並行で処理できるため、処理速度や効率性が飛躍的に向上します。本記事では、GPUサーバーの基本的な仕組みや特徴、活用事例、導入時に押さえるべきポイントまで、公的機関や信頼性の高い情報源をもとにわかりやすく解説します。これからGPUサーバーの導入を検討している方や、最適な選定方法を知りたい方は参考にしてください。

ABLENETレンタルサーバー

GPUサーバーとは?基本性能と役割をわかりやすく解説

GPUサーバーとは、画像処理装置(GPU)を複数搭載し、大量のデータを高速に処理できるサーバーのことです。近年、AIの普及やデータ量の爆発的増加を背景に、GPUを搭載したGPUサーバーの存在感が急速に高まっています。GPUサーバーは、従来のCPUサーバーに比べて大量並列処理能力が圧倒的で、機械学習やディープラーニングだけでなく、3DCGレンダリングや科学技術計算でも強みを発揮。

ここでは、GPUサーバーの基本性能と役割を整理しつつ、CPUとの違い、主要サーバーメーカーや代表製品についても、公的機関や信頼性の高い情報源を交えて初心者にも理解しやすく解説します。

  • GPUサーバーとは並列演算と高い処理能力を備えたサーバー
  • 国内外の主なGPUサーバーメーカーと代表的な製品

それぞれ順に解説していきます。

GPUサーバーとは並列演算と高い処理能力を備えたサーバー

GPUサーバーは、高度なデータ処理を支えるためにCPUに加え、GPUを搭載したサーバーです。GPUは数百〜数千に及ぶ演算ユニットを備えており、同時に大量の計算を処理する並列処理に特化しています。たとえば生成AIの学習や3Dレンダリングでは、画像データや行列演算が膨大な計算量を必要としますが、GPUなら同時に多くの計算を分散実行できるため、処理時間が劇的に短縮されます。

GPUの演算ユニットはCPUよりも小さく単純ですが、同じ命令を高速・並行で実行する点に優れており、大規模計算に最適化されているのです。これによりCPUでは数十時間かかる処理がGPUでは数十分で完了するといった実例もあり、AI開発や解析業務の効率化に不可欠な存在として注目されています。

CPUとGPUの違いは?それぞれの役割と得意分野を解説

CPU(Central Processing Unit)は汎用性に優れ、さまざまな処理を柔軟にこなすいわゆる“頭脳”です。少数の高性能コアで逐次命令を処理する設計になっており、OS制御やアプリケーションの制御など多様な処理に適しています。

一方、GPUは高集積な多数コアの並列構造により、同一命令を大量のデータに対して繰り返す処理に強いです。ディープラーニングの学習では、行列演算や畳み込みなど同じ処理を多数のデータに一括適用する場面で大きな効果を発揮します。たとえば、AIによる画像認識・音声変換などでは、CPUだけでは処理速度が追いつかないケースも多く、GPUの利用が不可欠です。

CPU GPU
役割 汎用的な計算処理の中心。OSやアプリ全体の制御・実行を担当 大量のデータを同時並列で処理し、画像処理や数値演算を高速化
構造 少数の高性能コア(例:4〜64コア)で順次処理に特化 数千〜数万の小規模コアで並列処理に特化
得意分野 複雑な分岐や条件分岐、単発処理、汎用計算 同一処理を大量のデータに同時適用(AI学習、レンダリング、物理シミュレーションなど)
処理方式 シリアル処理(順番に計算) 並列処理(同時に多数の計算)
主な用途 OSの動作管理、Webブラウジング、文書作成、軽量アプリの実行 ゲーム描画、AI学習、画像・動画処理、科学計算
メモリ 主にシステムメモリ(RAM)を利用 専用のVRAM(高速かつ大容量)を利用
電力消費 比較的少ない(数十〜数百W程度) 高負荷時は大きい(数百W〜1kW以上のモデルも存在)
価格帯 幅広い(数千円〜数十万円) 高性能モデルは非常に高額(数十万円〜数百万円)
代表メーカー Intel、AMD NVIDIA、AMD

こうした特性の違いから、実際のシステム設計では「制御系の処理はCPU」「大量演算はGPU」と役割分担され、両者が協調する形で効率的な性能を実現しています。

国内外の主なGPUサーバーメーカーと代表的な製品

GPUサーバー市場を牽引する国内外の主なメーカーには、NVIDIA、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Dell、Lenovo、富士通などがあります。NVIDIAは「DGX」シリーズを展開し、AI研究や生成モデルの学習用に最適化されたラック型サーバーを提供しています。たとえばDGX-1には8枚のTesla GPUが、DGX-2ではより強力なNVSwitch接続を備えたサーバー構成で性能と高帯域を両立しています。

HPEは「ProLiant」シリーズなどにGPUを搭載し、AIや解析用途向けにエアコールド・2U/4U筐体で提供。DellもAI向け高性能サーバーを展開しており、主要サーバーメーカーの多くがGPU対応モデルをラインナップしています。台湾のSupermicroも高密度GPUサーバーを販売しており、エッジ用途やクラウドインフラでも採用されています。

GPUサーバーの用途と特徴を分野別に解説

GPUサーバーは、その圧倒的な並列演算性能と高い処理能力により、従来のCPUサーバーでは困難だった膨大なデータ処理や高度な計算が可能です。特にAIや機械学習、ビッグデータ解析、科学技術計算、3DCGレンダリング、金融モデリングなど、計算集約型の分野で幅広く活用されています。

また、データセンターでは仮想化環境やクラウドサービスの基盤として、安定的かつ高効率な運用を支える役割も担います。ここでは、用途別にGPUサーバーの特性と活用事例を深掘りし、それぞれの分野でどのように価値を発揮しているのかを具体的に解説しますので、参考にしてください。

  • AIや機械学習で求められる高速なモデル学習と推論処理
  • データセンターで大規模演算や仮想化環境を安定運用する
  • 高速な並列演算と高精度計算で時間短縮と精度向上を実現する

それぞれ順に解説していきます。

AIや機械学習で求められる高速なモデル学習と推論処理

AIや機械学習分野では、膨大な量のデータを使ったモデル学習と、そのモデルを用いた推論が欠かせません。たとえばディープラーニングでは、画像認識や自然言語処理、音声認識などのタスクで数百万〜数十億パラメータを持つニューラルネットワークを学習します。

これらの学習には行列演算や畳み込み演算など同一処理を大量に繰り返す計算が多く、GPUの並列処理能力が大きな武器となります。特にNVIDIAのCUDAやcuDNNなどのライブラリを活用することで、CPU単独に比べて数十倍〜数百倍の学習速度向上が可能です。

推論処理でも、リアルタイム翻訳や自動運転車の物体検出など、低遅延で大量データを処理する必要がある場合にGPUは有効です。近年はGoogleのTensor Processing Unit(TPU)など専用ハードも登場していますが、柔軟性や開発環境の充実度からGPUは依然として主力選択肢となっています。

データセンターで大規模演算や仮想化環境を安定運用する

データセンターでは、GPUサーバーがAIサービス、科学計算、動画エンコード、仮想デスクトップ(VDI)など多様な用途で利用されています。特にクラウドサービス事業者は、複数ユーザーが同時にGPUリソースを共有できる仮想化技術を導入し、効率的なリソース配分を実現しています。たとえばNVIDIAのvGPU(仮想GPU)ソリューションでは、1台のGPUサーバーを複数の仮想マシンで分割利用し、3D CADやAI推論など高負荷業務をクラウド上で提供可能です。

さらに、大規模演算を必要とする気象予測や遺伝子解析、金融リスク解析などのHPC分野でもGPUサーバーは必須です。安定運用のためには、冗長化構成や冷却効率の高いラック設計、電源冗長化も欠かせません。こうした高密度・高性能なGPUサーバーは、オンプレミスだけでなくAWS、Azure、Google Cloudといったクラウドプラットフォーム上でも提供されており、企業の導入負担を軽減しています。

高速な並列演算と高精度計算で時間短縮と精度向上を実現する

科学技術計算やエンジニアリング分野では、計算の正確性とスピードの両立が求められます。GPUサーバーは、数百〜数千のコアによる並列計算能力により、複雑なシミュレーションや解析を短時間で実行可能にします。たとえば、自動車メーカーでは衝突解析や流体解析(CFD)、電子機器メーカーでは電磁界解析や熱解析が行われますが、これらの計算は高精度を維持しつつ膨大なステップを踏むため、従来のCPUサーバーでは数日かかるケースも珍しくありません。

GPUを活用すれば、同等の精度を保ちながら計算時間を数分の1〜数十分の1に短縮できる場合があります。また、医療分野では3D画像の再構築や分子動力学シミュレーション、製薬分野では新薬候補化合物の分子構造予測などにも利用され、研究開発のスピード向上に寄与しています。こうした高精度かつ高速な計算処理能力は、競争力強化や開発コスト削減にも直結するのです。

GPUサーバーの導入形態と選び方を解説

GPUサーバーを導入する際には、自社の用途や運用環境に合わせて最適な形態を選ぶことが重要です。導入形態には、自社施設内で運用する「オンプレミス型」、クラウドサービス事業者が提供する「クラウド型」、そして両者を組み合わせた「ハイブリッド型」があります。

オンプレミス型は高いカスタマイズ性とデータ管理の自由度が魅力ですが、初期投資や保守コストが発生します。一方、クラウド型は初期費用を抑えつつスケーラブルに利用でき、最新GPUへのアクセスも容易です。ハイブリッド型はその中間的な選択肢で、負荷や用途に応じて柔軟に環境を切り替えられます。ここでは、各導入形態の特徴やメリット・デメリット、そして導入前に押さえるべき選定ポイントを詳しく解説します。

  • オンプレミスとレンタルとクラウド型の導入方法をそれぞれ解説
  • GPUサーバー選定で重視すべき性能や拡張性のポイントを3つ紹介
  • 主力GPUモデルA100やH100やB200の性能と特徴

それぞれ順に解説していきます。

オンプレミスとレンタルとクラウド型の導入方法をそれぞれ解説

GPUサーバーの導入方法は大きく分けて「オンプレミス型」「レンタル方式」「クラウド型」の3つがあります。オンプレミス型は自社内にサーバー機器を設置して運用する方法で、ハードウェア構成やセキュリティ設定を自由にカスタマイズできる反面、高額な初期投資や運用保守の人員確保が必要です。長期運用や機密性の高いデータ処理に適しています。

レンタル方式はベンダーやデータセンターから物理的なGPUサーバーを期間限定で借りる方法で、初期費用を抑えつつ高性能な環境を短期間だけ利用できます。

クラウド型はインターネット経由でGPUリソースを提供するサービスで、必要なときに必要な分だけ利用できる柔軟性が魅力です。特に開発や検証フェーズでのスケーラブルな利用に向いています。導入にあたっては、自社の利用目的・期間・予算・セキュリティ要件を明確にした上で最適な方式を選ぶことが重要です。

  • 短期間の利用や試験導入ならレンタル方式
  • 常時稼働や高度なカスタム環境ならオンプレが最適
  • 柔軟性と即時利用を重視するならクラウド型が便利
  • 自作GPUサーバーは高額かつ知識や環境面のハードルが高い

短期間の利用や試験導入ならレンタル方式

レンタル方式は、GPUサーバーを一定期間だけベンダーやデータセンター事業者から借りる方法です。購入する場合に比べて初期費用が大幅に抑えられ、契約期間中のみ利用料を支払う形になります。そのため、AIモデルの学習やシミュレーションなど一時的に大規模な計算リソースが必要なケースや、GPUサーバーの性能を検証する試験導入フェーズに最適です。また、最新のGPU環境を短期間利用できるため、技術検証やPoCにも向いています。

一方、レンタル期間が長期化すると購入やクラウド利用と比べて割高になる可能性がある点や、構成のカスタマイズ自由度が低い場合がある点には注意が必要です。導入前には、レンタル費用と運用期間、そしてサポート体制を必ず確認してください。

常時稼働や高度なカスタム環境ならオンプレが最適

オンプレミス型は、自社内にGPUサーバーを設置し、自社のITチームが直接管理・運用する導入方法です。最大の強みは、ハードウェア構成やOS、セキュリティ設定を自由にカスタマイズできる点です。特に、機密性の高い研究開発や法規制の厳しい業界では、外部にデータを持ち出さず安全に運用できることが大きなメリットとなります。

さらに、常時稼働する大規模演算や高頻度なジョブ処理では、クラウドよりも長期的にコスト効率が良くなるケースもあります。ただし、初期投資としてサーバー本体やラック、冷却設備、電源設備などに高額な費用がかかる上、運用・保守に専門知識を持つ人材も必要です。そのため、導入前に総保有コストを算出し、長期的な運用計画を立てることが重要です。

柔軟性と即時利用を重視するならクラウド型が便利

クラウド型GPUサーバーは、インターネット経由でサービス事業者が提供するGPUリソースを利用する方式です。最大の利点は、必要なときに即座に利用を開始でき、使用時間やリソース量に応じて従量課金されるため、初期費用をほぼゼロにできる点です。特にAIモデルの開発・検証・スケーリング、または不定期な高負荷処理において、リソースを柔軟に増減できるメリットがあります。

また、ハードウェアの更新や保守はサービス事業者が行うため、管理負担が大幅に軽減されます。一方、長期利用や常時稼働の場合、月額料金が積み上がりオンプレミスより高額になるケースや、機密データを外部環境で処理するリスクが懸念されます。そのため、利用頻度・処理内容・データセキュリティ要件を考慮して導入判断を行いましょう。

自作GPUサーバーは高額かつ知識や環境面のハードルが高い

自作GPUサーバーは、市販のパーツやBTOメーカーのカスタマイズオプションを組み合わせて構築する方式です。必要な性能・用途に合わせてGPU、CPU、メモリ、ストレージ、冷却システムを自由に選べるため、理想的な構成が可能になります。

しかし、ハードウェア選定から組み立て、OSやドライバ、CUDAなどのライブラリ設定まで高度な知識が求められます。また、GPUは高価で、特にハイエンドモデルは1枚あたり数十万円〜百万円規模となるため、複数枚構成ではコストが非常に高いです。

さらに、発熱や消費電力も大きいため、冷却設備や専用電源の準備が必要です。故障時の自己対応や部品調達も含め、運用リスクと負担が大きい点から、専門知識を持たない場合は既製品やクラウド利用の方が現実的と言えます。

GPUサーバー選定で重視すべき性能や拡張性のポイントを3つ紹介

GPUサーバーの導入を成功させるためには、用途に応じた性能と将来の拡張性を見極めることが重要です。まず処理性能の要となるGPU自体は、最新世代でCUDAコア数の多いモデルほど並列演算性能が高く、AI学習やシミュレーションの時間短縮に直結します。

次に、大容量メモリと高速なデータ転送性能は、大規模データや高解像度映像の処理において処理効率を大きく左右します。そして、高いI/O性能やPCIeスロットの拡張性は、長期運用時のアップグレードや増設の柔軟性を確保し、運用効率や安定性を維持する上で不可欠です。

これら3つの観点をバランス良く検討することで、初期投資の効果を最大化し、長期的な運用コスト削減にもつながります。

3つの観点
  1. 新しい世代や高いCUDAコア数ほど処理性能は大幅に向上する
  2. 大容量メモリと高速データ転送速度で大量の処理ができる
  3. 高いI/O性能と拡張性で長期運用の効率と安定性を高める

新しい世代や高いCUDAコア数ほど処理性能は大幅に向上する

GPUの世代やCUDAコア数は、サーバーの並列処理能力に直結する重要な要素です。CUDAコアとは、NVIDIA製GPUに搭載される演算ユニットで、数千単位で搭載されることも珍しくありません。新しい世代のGPUは、アーキテクチャの改善によりクロックあたりの処理性能が向上し、同じコア数でも旧世代より効率的に演算を行えます。

また、最新世代ではAI推論専用のTensorコアや、レイトレーシングに特化したRTコアなどの追加機能も搭載されており、特定分野の処理速度が飛躍的に向上します。たとえば、NVIDIA H100は前世代A100に比べてAI学習速度が大幅に改善され、複雑なディープラーニングモデルのトレーニング時間を短縮できます。導入時には、単純なコア数だけでなくGPU世代、アーキテクチャ、搭載機能のバランスを見極めることが重要です。

大容量メモリと高速データ転送速度で大量の処理ができる

GPUサーバーで大規模データを扱う場合、メモリ容量とメモリ帯域幅は処理効率の鍵となります。GPUメモリは、学習モデルのパラメータや処理対象データを一時的に保持する領域で、容量が不足するとCPUメモリとの間でデータ転送が頻発し、処理速度が大きく低下します。最新のハイエンドGPUでは80GB以上のHBMが搭載され、帯域幅も2TB/sを超えることがあります。これにより、大規模言語モデル(LLM)や高解像度の3Dレンダリングなど、膨大なデータを一度に処理でき、処理時間短縮と安定性向上が実現します。

また、高速なNVLinkやPCIe Gen5などのインターフェースは、複数GPU間やGPU-CPU間の通信速度を大幅に向上させ、マルチGPU構成での効率を最大化します。用途に応じて十分なメモリ容量と帯域幅を確保することが重要です。

高いI/O性能と拡張性で長期運用の効率と安定性を高める

GPUサーバーを長期運用する場合、I/O性能と拡張性は将来の性能維持やアップグレードの柔軟性に直結します。I/O性能とは、ストレージやネットワークとのデータやり取りの速度を指し、高速なNVMe SSDや10GbE/100GbEネットワークインターフェースを備えることで、大規模データ処理や分散学習の効率が向上します。

また、PCIeスロットやM.2スロットの拡張性は、新しいGPUや追加ストレージの導入を容易にし、性能向上や用途拡大に対応可能です。さらに、冷却システムや電源容量にも余裕がある設計を選ぶことで、ハードウェアの安定稼働と長寿命化を実現します。運用中に技術進化へ柔軟に対応できる構成は、初期投資を保護しつつ、必要に応じて性能を強化できる大きな利点となります。

そのため、導入時には現状だけでなく、3年後・5年後の運用計画も見据えて選定しましょう。

主力GPUモデルA100やH100やB200の性能と特徴

GPUサーバーを導入・最適化する上で要となるのが GPUモデルの選択です。AI学習や推論、HPC用途では、世代ごとの性能差が処理効率や可用性に直結します。ここでは、NVIDIAがデータセンター向けに展開する主要GPUモデル「A100」「H100」「B200」の象徴的性能と特徴を整理し、用途に応じた選定ポイントを解説します。

ポイント
  1. NVIDIA A100の特徴と得意とする処理分野
  2. NVIDIA H100の特徴と進化した処理能力
  3. NVIDIA B200の特徴と活用に向く分野

NVIDIA A100の特徴と得意とする処理分野

NVIDIA A100は、データセンター向けGPUとして圧倒的な性能を持ち、AI・HPC用途のスタンダードになっています。最大80GBのHBM2e搭載モデルでは、メモリ帯域幅が2TB/sを超え、従来比で大規模モデル学習の時間を大幅に短縮できます。さらに、MIG(Multi‑Instance GPU)機能により、1枚のGPUを最大7つの独立インスタンスに分割し、複数ユーザーやジョブで効率的に共有運用できる点も大きな利点です。

AI分野では、トランスフォーマーモデルの推論やディープラーニングモデル学習、HPCでは行列演算や科学シミュレーションなど、演算リソースの大量並列性と高いメモリ帯域の利点を活かせる用途に最適です。高いスケール性能と汎用性を備えるA100は、柔軟なワークロードへの対応能力が求められる環境で特に輝きます。

NVIDIA H100の特徴と進化した処理能力

NVIDIA H100は、A100の後継としてAI処理性能を一層強化し、特に大規模AIモデルや未来的な推論処理を加速します。第4世代TensorコアとFP8精度のサポートにより、GPT‑3など大規模生成モデルの学習速度を最大4倍に向上させます。GPU間接続も、第4世代NVLink(900GB/s)やNDR InfiniBand、PCIe Gen5導入で高速通信が可能になり、GPUクラスタのスケーラビリティと効率も飛躍的に向上しました。

また、推論性能においても最大30倍の高速化を実現し、低レイテンシが求められるリアルタイムAIアプリケーションに最適です。FP64やINT8にも対応する汎用性の高さも魅力です。H100は、AI研究や大規模モデルの実務展開、リアルタイム処理での応用を加速します。

NVIDIA B200の特徴と活用に向く分野

NVIDIA B200は、NVIDIAの最新世代としてAI処理性能を根本から革新しています。TSMCの4NPプロセスを採用し、2080億トランジスタを搭載したデュアルダイ設計で、前世代比で大きく演算能力が向上しています。Google CloudのA4 VMで採用されているように、8枚のBlackwell GPUと第5世代NVLinkを組み合わせた構成では、AIトレーニングと推論処理が大きく加速し、柔軟なモデル運用が可能です。

また、NVIDIA自身が「ジェネレーティブAI時代に向けて設計されたプロセッサ」と位置付けており、大規模言語モデルやチャットボット、レコメンダーなど生成系AIにおける高スループット・高精度処理に最適です。B200は、AIの新時代へ対応する企業向け基盤として、最高クラスの性能を提供し、導入することで将来にわたる性能投資を保護できます。

GPUサーバーに関するよくある質問

GPUサーバーはAI開発や大規模データ解析など専門的な用途で注目を集めていますが、「個人でも利用できるのか」「ゲーミングPCとの違いは何か」「クラウドやレンタルではどちらを選ぶべきか」など、多くの疑問を持つ方がいます。特に、初めてGPUサーバーの導入や利用を検討する場合、仕様や価格、運用方法など複数の要素を比較検討する必要があるでしょう。

ここでは、GPUサーバーに関する代表的な質問とその回答をわかりやすく解説します。

Q
GPUサーバーは個人でも利用できますか?
A

GPUサーバーは企業向けの大規模システムというイメージがありますが、近年では個人でも利用できる選択肢が増えています。クラウド型GPUサーバーは、初期投資なしで時間単位の課金で利用可能なため、学生や個人開発者でも手軽にアクセスできます。

また、レンタルGPUサーバーも短期契約が可能で、試験的なAIモデル学習や動画処理、3Dレンダリングなどに適しています。オンプレミス型も選択肢にはなりますが、ハードウェア購入費や設置環境、電力コスト、メンテナンスの負担が大きく、個人利用にはハードルが高いのが実情です。

したがって、個人利用ではクラウドやレンタル型を選ぶのが現実的であり、必要なときだけ使う「オンデマンド利用」によってコスト効率も高まります。

Q
GPUサーバーとゲーミングPCの違いは何ですか?
A

GPUサーバーとゲーミングPCはどちらも高性能GPUを搭載していますが、目的と設計思想が異なります。ゲーミングPCは高フレームレートのゲーム描画や動画編集など、主にリアルタイム描画性能を重視しています。一方、GPUサーバーは長時間かつ大規模な並列演算を安定的に処理できるよう設計され、冷却性能や冗長化電源、ECCメモリなど信頼性を重視しています。

また、GPUサーバーは複数のGPUカードを搭載し、大規模AI学習やHPC用途で高いスループットを発揮します。ゲーミングPCではこれほどの並列性は不要で、一般的に単一GPUで十分です。加えて、GPUサーバーはリモートアクセスや仮想化環境構築にも適しており、複数ユーザーや同時ジョブ実行に対応できます。

つまり、GPUサーバーは業務・研究用の安定性と拡張性を備えた計算基盤であり、ゲーミングPCは個人利用向けの即応性重視のマシンです。

Q
クラウドGPUサーバーとレンタルGPUサーバーの違いは?
A

クラウドGPUサーバーはAWSやGoogle Cloud、Azureなどのクラウドプロバイダが提供し、世界中どこからでも即時利用できる柔軟性が特徴です。利用時間単位で課金されるため、短時間の実験やスケーラブルなリソース利用に最適です。

一方、レンタルGPUサーバーは国内外のホスティング業者が物理サーバーを貸し出す形で、一定期間(1か月〜数年)利用する契約が一般的です。こちらはクラウドよりも長期利用時のコストが安く、安定した性能を確保できます。

クラウドは柔軟性やスケーラビリティに優れますが、長期連続稼働ではコストが高くなる場合があります。レンタルは安定した固定料金で運用できる反面、即時のスケールアップや短期解約は難しい場合があります。

用途や予算、利用期間を明確にした上で選択することが重要です。

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ABLENET

運営者情報

ABLENET®は株式会社ケイアンドケイコーポレーションが提供するホスティングサービスです。レンタルサーバー(共用サーバー)、VPS(仮想サーバー)、GPUサーバーを提供しています。

GPUサーバーとは?用途と特徴や導入のポイントを解説

GPUサーバーとは?用途と特徴や導入のポイントを解説

近年、AI(人工知能)やディープラーニング、3Dレンダリング、科学シミュレーションなど、高度な計算処理を必要とする分野でGPUサーバーの需要が急速に高まっています。GPUは元々、画像処理やグラフィック描画を得意とするプロセッサですが、その並列処理能力の高さから、機械学習モデルの学習やビッグデータ解析など幅広い用途で活用されるようになりました。

CPUサーバーに比べ、膨大な計算を同時並行で処理できるため、処理速度や効率性が飛躍的に向上します。本記事では、GPUサーバーの基本的な仕組みや特徴、活用事例、導入時に押さえるべきポイントまで、公的機関や信頼性の高い情報源をもとにわかりやすく解説します。これからGPUサーバーの導入を検討している方や、最適な選定方法を知りたい方は参考にしてください。

ABLENETレンタルサーバー

GPUサーバーとは?基本性能と役割をわかりやすく解説

GPUサーバーとは、画像処理装置(GPU)を複数搭載し、大量のデータを高速に処理できるサーバーのことです。近年、AIの普及やデータ量の爆発的増加を背景に、GPUを搭載したGPUサーバーの存在感が急速に高まっています。GPUサーバーは、従来のCPUサーバーに比べて大量並列処理能力が圧倒的で、機械学習やディープラーニングだけでなく、3DCGレンダリングや科学技術計算でも強みを発揮。

ここでは、GPUサーバーの基本性能と役割を整理しつつ、CPUとの違い、主要サーバーメーカーや代表製品についても、公的機関や信頼性の高い情報源を交えて初心者にも理解しやすく解説します。

  • GPUサーバーとは並列演算と高い処理能力を備えたサーバー
  • 国内外の主なGPUサーバーメーカーと代表的な製品

それぞれ順に解説していきます。

GPUサーバーとは並列演算と高い処理能力を備えたサーバー

GPUサーバーは、高度なデータ処理を支えるためにCPUに加え、GPUを搭載したサーバーです。GPUは数百〜数千に及ぶ演算ユニットを備えており、同時に大量の計算を処理する並列処理に特化しています。たとえば生成AIの学習や3Dレンダリングでは、画像データや行列演算が膨大な計算量を必要としますが、GPUなら同時に多くの計算を分散実行できるため、処理時間が劇的に短縮されます。

GPUの演算ユニットはCPUよりも小さく単純ですが、同じ命令を高速・並行で実行する点に優れており、大規模計算に最適化されているのです。これによりCPUでは数十時間かかる処理がGPUでは数十分で完了するといった実例もあり、AI開発や解析業務の効率化に不可欠な存在として注目されています。

CPUとGPUの違いは?それぞれの役割と得意分野を解説

CPU(Central Processing Unit)は汎用性に優れ、さまざまな処理を柔軟にこなすいわゆる“頭脳”です。少数の高性能コアで逐次命令を処理する設計になっており、OS制御やアプリケーションの制御など多様な処理に適しています。

一方、GPUは高集積な多数コアの並列構造により、同一命令を大量のデータに対して繰り返す処理に強いです。ディープラーニングの学習では、行列演算や畳み込みなど同じ処理を多数のデータに一括適用する場面で大きな効果を発揮します。たとえば、AIによる画像認識・音声変換などでは、CPUだけでは処理速度が追いつかないケースも多く、GPUの利用が不可欠です。

CPU GPU
役割 汎用的な計算処理の中心。OSやアプリ全体の制御・実行を担当 大量のデータを同時並列で処理し、画像処理や数値演算を高速化
構造 少数の高性能コア(例:4〜64コア)で順次処理に特化 数千〜数万の小規模コアで並列処理に特化
得意分野 複雑な分岐や条件分岐、単発処理、汎用計算 同一処理を大量のデータに同時適用(AI学習、レンダリング、物理シミュレーションなど)
処理方式 シリアル処理(順番に計算) 並列処理(同時に多数の計算)
主な用途 OSの動作管理、Webブラウジング、文書作成、軽量アプリの実行 ゲーム描画、AI学習、画像・動画処理、科学計算
メモリ 主にシステムメモリ(RAM)を利用 専用のVRAM(高速かつ大容量)を利用
電力消費 比較的少ない(数十〜数百W程度) 高負荷時は大きい(数百W〜1kW以上のモデルも存在)
価格帯 幅広い(数千円〜数十万円) 高性能モデルは非常に高額(数十万円〜数百万円)
代表メーカー Intel、AMD NVIDIA、AMD

こうした特性の違いから、実際のシステム設計では「制御系の処理はCPU」「大量演算はGPU」と役割分担され、両者が協調する形で効率的な性能を実現しています。

国内外の主なGPUサーバーメーカーと代表的な製品

GPUサーバー市場を牽引する国内外の主なメーカーには、NVIDIA、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Dell、Lenovo、富士通などがあります。NVIDIAは「DGX」シリーズを展開し、AI研究や生成モデルの学習用に最適化されたラック型サーバーを提供しています。たとえばDGX-1には8枚のTesla GPUが、DGX-2ではより強力なNVSwitch接続を備えたサーバー構成で性能と高帯域を両立しています。

HPEは「ProLiant」シリーズなどにGPUを搭載し、AIや解析用途向けにエアコールド・2U/4U筐体で提供。DellもAI向け高性能サーバーを展開しており、主要サーバーメーカーの多くがGPU対応モデルをラインナップしています。台湾のSupermicroも高密度GPUサーバーを販売しており、エッジ用途やクラウドインフラでも採用されています。

GPUサーバーの用途と特徴を分野別に解説

GPUサーバーは、その圧倒的な並列演算性能と高い処理能力により、従来のCPUサーバーでは困難だった膨大なデータ処理や高度な計算が可能です。特にAIや機械学習、ビッグデータ解析、科学技術計算、3DCGレンダリング、金融モデリングなど、計算集約型の分野で幅広く活用されています。

また、データセンターでは仮想化環境やクラウドサービスの基盤として、安定的かつ高効率な運用を支える役割も担います。ここでは、用途別にGPUサーバーの特性と活用事例を深掘りし、それぞれの分野でどのように価値を発揮しているのかを具体的に解説しますので、参考にしてください。

  • AIや機械学習で求められる高速なモデル学習と推論処理
  • データセンターで大規模演算や仮想化環境を安定運用する
  • 高速な並列演算と高精度計算で時間短縮と精度向上を実現する

それぞれ順に解説していきます。

AIや機械学習で求められる高速なモデル学習と推論処理

AIや機械学習分野では、膨大な量のデータを使ったモデル学習と、そのモデルを用いた推論が欠かせません。たとえばディープラーニングでは、画像認識や自然言語処理、音声認識などのタスクで数百万〜数十億パラメータを持つニューラルネットワークを学習します。

これらの学習には行列演算や畳み込み演算など同一処理を大量に繰り返す計算が多く、GPUの並列処理能力が大きな武器となります。特にNVIDIAのCUDAやcuDNNなどのライブラリを活用することで、CPU単独に比べて数十倍〜数百倍の学習速度向上が可能です。

推論処理でも、リアルタイム翻訳や自動運転車の物体検出など、低遅延で大量データを処理する必要がある場合にGPUは有効です。近年はGoogleのTensor Processing Unit(TPU)など専用ハードも登場していますが、柔軟性や開発環境の充実度からGPUは依然として主力選択肢となっています。

データセンターで大規模演算や仮想化環境を安定運用する

データセンターでは、GPUサーバーがAIサービス、科学計算、動画エンコード、仮想デスクトップ(VDI)など多様な用途で利用されています。特にクラウドサービス事業者は、複数ユーザーが同時にGPUリソースを共有できる仮想化技術を導入し、効率的なリソース配分を実現しています。たとえばNVIDIAのvGPU(仮想GPU)ソリューションでは、1台のGPUサーバーを複数の仮想マシンで分割利用し、3D CADやAI推論など高負荷業務をクラウド上で提供可能です。

さらに、大規模演算を必要とする気象予測や遺伝子解析、金融リスク解析などのHPC分野でもGPUサーバーは必須です。安定運用のためには、冗長化構成や冷却効率の高いラック設計、電源冗長化も欠かせません。こうした高密度・高性能なGPUサーバーは、オンプレミスだけでなくAWS、Azure、Google Cloudといったクラウドプラットフォーム上でも提供されており、企業の導入負担を軽減しています。

高速な並列演算と高精度計算で時間短縮と精度向上を実現する

科学技術計算やエンジニアリング分野では、計算の正確性とスピードの両立が求められます。GPUサーバーは、数百〜数千のコアによる並列計算能力により、複雑なシミュレーションや解析を短時間で実行可能にします。たとえば、自動車メーカーでは衝突解析や流体解析(CFD)、電子機器メーカーでは電磁界解析や熱解析が行われますが、これらの計算は高精度を維持しつつ膨大なステップを踏むため、従来のCPUサーバーでは数日かかるケースも珍しくありません。

GPUを活用すれば、同等の精度を保ちながら計算時間を数分の1〜数十分の1に短縮できる場合があります。また、医療分野では3D画像の再構築や分子動力学シミュレーション、製薬分野では新薬候補化合物の分子構造予測などにも利用され、研究開発のスピード向上に寄与しています。こうした高精度かつ高速な計算処理能力は、競争力強化や開発コスト削減にも直結するのです。

GPUサーバーの導入形態と選び方を解説

GPUサーバーを導入する際には、自社の用途や運用環境に合わせて最適な形態を選ぶことが重要です。導入形態には、自社施設内で運用する「オンプレミス型」、クラウドサービス事業者が提供する「クラウド型」、そして両者を組み合わせた「ハイブリッド型」があります。

オンプレミス型は高いカスタマイズ性とデータ管理の自由度が魅力ですが、初期投資や保守コストが発生します。一方、クラウド型は初期費用を抑えつつスケーラブルに利用でき、最新GPUへのアクセスも容易です。ハイブリッド型はその中間的な選択肢で、負荷や用途に応じて柔軟に環境を切り替えられます。ここでは、各導入形態の特徴やメリット・デメリット、そして導入前に押さえるべき選定ポイントを詳しく解説します。

  • オンプレミスとレンタルとクラウド型の導入方法をそれぞれ解説
  • GPUサーバー選定で重視すべき性能や拡張性のポイントを3つ紹介
  • 主力GPUモデルA100やH100やB200の性能と特徴

それぞれ順に解説していきます。

オンプレミスとレンタルとクラウド型の導入方法をそれぞれ解説

GPUサーバーの導入方法は大きく分けて「オンプレミス型」「レンタル方式」「クラウド型」の3つがあります。オンプレミス型は自社内にサーバー機器を設置して運用する方法で、ハードウェア構成やセキュリティ設定を自由にカスタマイズできる反面、高額な初期投資や運用保守の人員確保が必要です。長期運用や機密性の高いデータ処理に適しています。

レンタル方式はベンダーやデータセンターから物理的なGPUサーバーを期間限定で借りる方法で、初期費用を抑えつつ高性能な環境を短期間だけ利用できます。

クラウド型はインターネット経由でGPUリソースを提供するサービスで、必要なときに必要な分だけ利用できる柔軟性が魅力です。特に開発や検証フェーズでのスケーラブルな利用に向いています。導入にあたっては、自社の利用目的・期間・予算・セキュリティ要件を明確にした上で最適な方式を選ぶことが重要です。

  • 短期間の利用や試験導入ならレンタル方式
  • 常時稼働や高度なカスタム環境ならオンプレが最適
  • 柔軟性と即時利用を重視するならクラウド型が便利
  • 自作GPUサーバーは高額かつ知識や環境面のハードルが高い

短期間の利用や試験導入ならレンタル方式

レンタル方式は、GPUサーバーを一定期間だけベンダーやデータセンター事業者から借りる方法です。購入する場合に比べて初期費用が大幅に抑えられ、契約期間中のみ利用料を支払う形になります。そのため、AIモデルの学習やシミュレーションなど一時的に大規模な計算リソースが必要なケースや、GPUサーバーの性能を検証する試験導入フェーズに最適です。また、最新のGPU環境を短期間利用できるため、技術検証やPoCにも向いています。

一方、レンタル期間が長期化すると購入やクラウド利用と比べて割高になる可能性がある点や、構成のカスタマイズ自由度が低い場合がある点には注意が必要です。導入前には、レンタル費用と運用期間、そしてサポート体制を必ず確認してください。

常時稼働や高度なカスタム環境ならオンプレが最適

オンプレミス型は、自社内にGPUサーバーを設置し、自社のITチームが直接管理・運用する導入方法です。最大の強みは、ハードウェア構成やOS、セキュリティ設定を自由にカスタマイズできる点です。特に、機密性の高い研究開発や法規制の厳しい業界では、外部にデータを持ち出さず安全に運用できることが大きなメリットとなります。

さらに、常時稼働する大規模演算や高頻度なジョブ処理では、クラウドよりも長期的にコスト効率が良くなるケースもあります。ただし、初期投資としてサーバー本体やラック、冷却設備、電源設備などに高額な費用がかかる上、運用・保守に専門知識を持つ人材も必要です。そのため、導入前に総保有コストを算出し、長期的な運用計画を立てることが重要です。

柔軟性と即時利用を重視するならクラウド型が便利

クラウド型GPUサーバーは、インターネット経由でサービス事業者が提供するGPUリソースを利用する方式です。最大の利点は、必要なときに即座に利用を開始でき、使用時間やリソース量に応じて従量課金されるため、初期費用をほぼゼロにできる点です。特にAIモデルの開発・検証・スケーリング、または不定期な高負荷処理において、リソースを柔軟に増減できるメリットがあります。

また、ハードウェアの更新や保守はサービス事業者が行うため、管理負担が大幅に軽減されます。一方、長期利用や常時稼働の場合、月額料金が積み上がりオンプレミスより高額になるケースや、機密データを外部環境で処理するリスクが懸念されます。そのため、利用頻度・処理内容・データセキュリティ要件を考慮して導入判断を行いましょう。

自作GPUサーバーは高額かつ知識や環境面のハードルが高い

自作GPUサーバーは、市販のパーツやBTOメーカーのカスタマイズオプションを組み合わせて構築する方式です。必要な性能・用途に合わせてGPU、CPU、メモリ、ストレージ、冷却システムを自由に選べるため、理想的な構成が可能になります。

しかし、ハードウェア選定から組み立て、OSやドライバ、CUDAなどのライブラリ設定まで高度な知識が求められます。また、GPUは高価で、特にハイエンドモデルは1枚あたり数十万円〜百万円規模となるため、複数枚構成ではコストが非常に高いです。

さらに、発熱や消費電力も大きいため、冷却設備や専用電源の準備が必要です。故障時の自己対応や部品調達も含め、運用リスクと負担が大きい点から、専門知識を持たない場合は既製品やクラウド利用の方が現実的と言えます。

GPUサーバー選定で重視すべき性能や拡張性のポイントを3つ紹介

GPUサーバーの導入を成功させるためには、用途に応じた性能と将来の拡張性を見極めることが重要です。まず処理性能の要となるGPU自体は、最新世代でCUDAコア数の多いモデルほど並列演算性能が高く、AI学習やシミュレーションの時間短縮に直結します。

次に、大容量メモリと高速なデータ転送性能は、大規模データや高解像度映像の処理において処理効率を大きく左右します。そして、高いI/O性能やPCIeスロットの拡張性は、長期運用時のアップグレードや増設の柔軟性を確保し、運用効率や安定性を維持する上で不可欠です。

これら3つの観点をバランス良く検討することで、初期投資の効果を最大化し、長期的な運用コスト削減にもつながります。

3つの観点
  1. 新しい世代や高いCUDAコア数ほど処理性能は大幅に向上する
  2. 大容量メモリと高速データ転送速度で大量の処理ができる
  3. 高いI/O性能と拡張性で長期運用の効率と安定性を高める

新しい世代や高いCUDAコア数ほど処理性能は大幅に向上する

GPUの世代やCUDAコア数は、サーバーの並列処理能力に直結する重要な要素です。CUDAコアとは、NVIDIA製GPUに搭載される演算ユニットで、数千単位で搭載されることも珍しくありません。新しい世代のGPUは、アーキテクチャの改善によりクロックあたりの処理性能が向上し、同じコア数でも旧世代より効率的に演算を行えます。

また、最新世代ではAI推論専用のTensorコアや、レイトレーシングに特化したRTコアなどの追加機能も搭載されており、特定分野の処理速度が飛躍的に向上します。たとえば、NVIDIA H100は前世代A100に比べてAI学習速度が大幅に改善され、複雑なディープラーニングモデルのトレーニング時間を短縮できます。導入時には、単純なコア数だけでなくGPU世代、アーキテクチャ、搭載機能のバランスを見極めることが重要です。

大容量メモリと高速データ転送速度で大量の処理ができる

GPUサーバーで大規模データを扱う場合、メモリ容量とメモリ帯域幅は処理効率の鍵となります。GPUメモリは、学習モデルのパラメータや処理対象データを一時的に保持する領域で、容量が不足するとCPUメモリとの間でデータ転送が頻発し、処理速度が大きく低下します。最新のハイエンドGPUでは80GB以上のHBMが搭載され、帯域幅も2TB/sを超えることがあります。これにより、大規模言語モデル(LLM)や高解像度の3Dレンダリングなど、膨大なデータを一度に処理でき、処理時間短縮と安定性向上が実現します。

また、高速なNVLinkやPCIe Gen5などのインターフェースは、複数GPU間やGPU-CPU間の通信速度を大幅に向上させ、マルチGPU構成での効率を最大化します。用途に応じて十分なメモリ容量と帯域幅を確保することが重要です。

高いI/O性能と拡張性で長期運用の効率と安定性を高める

GPUサーバーを長期運用する場合、I/O性能と拡張性は将来の性能維持やアップグレードの柔軟性に直結します。I/O性能とは、ストレージやネットワークとのデータやり取りの速度を指し、高速なNVMe SSDや10GbE/100GbEネットワークインターフェースを備えることで、大規模データ処理や分散学習の効率が向上します。

また、PCIeスロットやM.2スロットの拡張性は、新しいGPUや追加ストレージの導入を容易にし、性能向上や用途拡大に対応可能です。さらに、冷却システムや電源容量にも余裕がある設計を選ぶことで、ハードウェアの安定稼働と長寿命化を実現します。運用中に技術進化へ柔軟に対応できる構成は、初期投資を保護しつつ、必要に応じて性能を強化できる大きな利点となります。

そのため、導入時には現状だけでなく、3年後・5年後の運用計画も見据えて選定しましょう。

主力GPUモデルA100やH100やB200の性能と特徴

GPUサーバーを導入・最適化する上で要となるのが GPUモデルの選択です。AI学習や推論、HPC用途では、世代ごとの性能差が処理効率や可用性に直結します。ここでは、NVIDIAがデータセンター向けに展開する主要GPUモデル「A100」「H100」「B200」の象徴的性能と特徴を整理し、用途に応じた選定ポイントを解説します。

ポイント
  1. NVIDIA A100の特徴と得意とする処理分野
  2. NVIDIA H100の特徴と進化した処理能力
  3. NVIDIA B200の特徴と活用に向く分野

NVIDIA A100の特徴と得意とする処理分野

NVIDIA A100は、データセンター向けGPUとして圧倒的な性能を持ち、AI・HPC用途のスタンダードになっています。最大80GBのHBM2e搭載モデルでは、メモリ帯域幅が2TB/sを超え、従来比で大規模モデル学習の時間を大幅に短縮できます。さらに、MIG(Multi‑Instance GPU)機能により、1枚のGPUを最大7つの独立インスタンスに分割し、複数ユーザーやジョブで効率的に共有運用できる点も大きな利点です。

AI分野では、トランスフォーマーモデルの推論やディープラーニングモデル学習、HPCでは行列演算や科学シミュレーションなど、演算リソースの大量並列性と高いメモリ帯域の利点を活かせる用途に最適です。高いスケール性能と汎用性を備えるA100は、柔軟なワークロードへの対応能力が求められる環境で特に輝きます。

NVIDIA H100の特徴と進化した処理能力

NVIDIA H100は、A100の後継としてAI処理性能を一層強化し、特に大規模AIモデルや未来的な推論処理を加速します。第4世代TensorコアとFP8精度のサポートにより、GPT‑3など大規模生成モデルの学習速度を最大4倍に向上させます。GPU間接続も、第4世代NVLink(900GB/s)やNDR InfiniBand、PCIe Gen5導入で高速通信が可能になり、GPUクラスタのスケーラビリティと効率も飛躍的に向上しました。

また、推論性能においても最大30倍の高速化を実現し、低レイテンシが求められるリアルタイムAIアプリケーションに最適です。FP64やINT8にも対応する汎用性の高さも魅力です。H100は、AI研究や大規模モデルの実務展開、リアルタイム処理での応用を加速します。

NVIDIA B200の特徴と活用に向く分野

NVIDIA B200は、NVIDIAの最新世代としてAI処理性能を根本から革新しています。TSMCの4NPプロセスを採用し、2080億トランジスタを搭載したデュアルダイ設計で、前世代比で大きく演算能力が向上しています。Google CloudのA4 VMで採用されているように、8枚のBlackwell GPUと第5世代NVLinkを組み合わせた構成では、AIトレーニングと推論処理が大きく加速し、柔軟なモデル運用が可能です。

また、NVIDIA自身が「ジェネレーティブAI時代に向けて設計されたプロセッサ」と位置付けており、大規模言語モデルやチャットボット、レコメンダーなど生成系AIにおける高スループット・高精度処理に最適です。B200は、AIの新時代へ対応する企業向け基盤として、最高クラスの性能を提供し、導入することで将来にわたる性能投資を保護できます。

GPUサーバーに関するよくある質問

GPUサーバーはAI開発や大規模データ解析など専門的な用途で注目を集めていますが、「個人でも利用できるのか」「ゲーミングPCとの違いは何か」「クラウドやレンタルではどちらを選ぶべきか」など、多くの疑問を持つ方がいます。特に、初めてGPUサーバーの導入や利用を検討する場合、仕様や価格、運用方法など複数の要素を比較検討する必要があるでしょう。

ここでは、GPUサーバーに関する代表的な質問とその回答をわかりやすく解説します。

Q
GPUサーバーは個人でも利用できますか?
A

GPUサーバーは企業向けの大規模システムというイメージがありますが、近年では個人でも利用できる選択肢が増えています。クラウド型GPUサーバーは、初期投資なしで時間単位の課金で利用可能なため、学生や個人開発者でも手軽にアクセスできます。

また、レンタルGPUサーバーも短期契約が可能で、試験的なAIモデル学習や動画処理、3Dレンダリングなどに適しています。オンプレミス型も選択肢にはなりますが、ハードウェア購入費や設置環境、電力コスト、メンテナンスの負担が大きく、個人利用にはハードルが高いのが実情です。

したがって、個人利用ではクラウドやレンタル型を選ぶのが現実的であり、必要なときだけ使う「オンデマンド利用」によってコスト効率も高まります。

Q
GPUサーバーとゲーミングPCの違いは何ですか?
A

GPUサーバーとゲーミングPCはどちらも高性能GPUを搭載していますが、目的と設計思想が異なります。ゲーミングPCは高フレームレートのゲーム描画や動画編集など、主にリアルタイム描画性能を重視しています。一方、GPUサーバーは長時間かつ大規模な並列演算を安定的に処理できるよう設計され、冷却性能や冗長化電源、ECCメモリなど信頼性を重視しています。

また、GPUサーバーは複数のGPUカードを搭載し、大規模AI学習やHPC用途で高いスループットを発揮します。ゲーミングPCではこれほどの並列性は不要で、一般的に単一GPUで十分です。加えて、GPUサーバーはリモートアクセスや仮想化環境構築にも適しており、複数ユーザーや同時ジョブ実行に対応できます。

つまり、GPUサーバーは業務・研究用の安定性と拡張性を備えた計算基盤であり、ゲーミングPCは個人利用向けの即応性重視のマシンです。

Q
クラウドGPUサーバーとレンタルGPUサーバーの違いは?
A

クラウドGPUサーバーはAWSやGoogle Cloud、Azureなどのクラウドプロバイダが提供し、世界中どこからでも即時利用できる柔軟性が特徴です。利用時間単位で課金されるため、短時間の実験やスケーラブルなリソース利用に最適です。

一方、レンタルGPUサーバーは国内外のホスティング業者が物理サーバーを貸し出す形で、一定期間(1か月〜数年)利用する契約が一般的です。こちらはクラウドよりも長期利用時のコストが安く、安定した性能を確保できます。

クラウドは柔軟性やスケーラビリティに優れますが、長期連続稼働ではコストが高くなる場合があります。レンタルは安定した固定料金で運用できる反面、即時のスケールアップや短期解約は難しい場合があります。

用途や予算、利用期間を明確にした上で選択することが重要です。